2026年10月02日
~症状に合わせた治療で、より良い生活を目指します~
パーキンソン病と診断されると、「これからどのような治療をするのだろう」「薬をずっと飲み続ける必要があるのだろう」と不安に感じる方も少なくありません。
パーキンソン病は、脳の中で運動の調節に関係する「ドパミン」が減少することで、手足の震え、動作の遅さ、筋肉のこわばり、歩きにくさなどが起こる病気です。
現在のところ、病気そのものを完全に治す治療法は確立されていません。
しかし、薬によって不足したドパミンの働きを補ったり、運動療法を行ったりすることで、症状を改善し、日常生活をより過ごしやすくすることが期待できます。
また、治療は薬だけではありません。
患者さん一人ひとりの症状や生活スタイルに合わせて、薬物療法、リハビリテーション、生活上の工夫などを組み合わせていくことが大切です。
今回は、パーキンソン病の治療について、できるだけわかりやすくご紹介します。
パーキンソン病の治療にはどのようなものがありますか?
パーキンソン病の治療は、大きく分けて次のような方法があります。
① 薬による治療
② 運動療法・リハビリテーション
③ 生活習慣や日常生活の工夫
➃ 運動以外の症状の治療
➄ 症状が進行した場合の専門的な治療
症状の種類や程度、年齢、生活スタイル、仕事や家庭での役割などを考慮しながら、治療方法を選択します。
① 薬による治療
パーキンソン病では、脳内のドパミンが不足することで身体をスムーズに動かしにくくなります。
そこで、ドパミンの働きを補う薬などを使用して、運動症状を改善します。
代表的な薬の一つが「レボドパ」です。
レボドパは脳の中でドパミンに変化し、ドパミン不足を補うことで、動作の遅さや筋肉のこわばり、歩きにくさなどを改善します。
パーキンソン病の治療において、非常に重要な薬です。
レボドパ以外にもさまざまな薬があります
パーキンソン病では、レボドパ以外にもさまざまな薬が使用されます。
例えば、
① ドパミンアゴニスト
② MAO-B阻害薬
③ COMT阻害薬
④ アマンタジン
⑤ 抗コリン薬
などがあります。
これらの薬は、それぞれ異なる仕組みでドパミンの働きを補ったり、作用を長くしたりします。
患者さんの年齢や症状、日常生活への影響などを考慮し、必要な薬を組み合わせて治療します。
すべての患者さんに同じ薬を使用するわけではありません。
薬は「症状に合わせて調整」することが大切です
パーキンソン病では、病気の進行に伴って症状が変化することがあります。
そのため、一度薬を決めたらずっと同じ量を飲み続けるというわけではありません。
診察では、
① 手足の震えがどの程度あるか
② 動作がどのくらいスムーズになったか
③ 歩きやすくなったか
④ 薬の効果が切れる時間帯があるか
⑤ 薬を飲んだ後に不随意運動がないか
⑥ 日常生活にどの程度影響しているか
などを確認しながら、薬の種類や量、飲むタイミングなどを調整していきます。
「薬を飲んでいるけれど、以前より動きにくくなってきた」という場合も、自己判断で薬を中止したり増減したりせず、主治医に相談することが大切です。
「薬が効いている時間」と「効いていない時間」
パーキンソン病の治療を続けていると、薬が効いている時間と、効果が弱くなって動きにくくなる時間がはっきりしてくることがあります。
これを「ウェアリング・オフ」と呼びます。
例えば、
「薬を飲むと動きやすいが、次の薬を飲む前になると動きにくくなる」
「朝は動きにくいが、薬を飲むと動けるようになる」
といった状態です。
このような症状がある場合には、薬の量や服用回数、薬の組み合わせなどを調整することで、症状の変動を少なくできる場合があります。
薬による不随意運動が起こることもあります
治療期間が長くなると、薬が効いている時間帯に身体が勝手に動いてしまう「ジスキネジア」と呼ばれる症状がみられることがあります。
手足が勝手に動いたり、身体がくねくね動いたりするなど、患者さんによって症状はさまざまです。
このような症状が出た場合も、治療を中止するのではなく、薬の量や種類などを調整することで改善を目指します。
薬の効果だけでなく、副作用や運動症状の変化も含めて定期的に診察することが重要です。
② 運動療法・リハビリテーション
パーキンソン病の治療では、薬だけでなく運動やリハビリテーションも非常に重要です。
身体を動かすことで、筋力や柔軟性を維持し、歩行やバランスなどの機能を保つことにつながります。
例えば、
① ウォーキング
② ストレッチ
③ 筋力トレーニング
④ バランス練習
⑤ 姿勢を意識した運動
などがあります。
無理のない範囲で、継続して身体を動かすことが大切です。
③ 日常生活で気をつけること
パーキンソン病では、日常生活の中で転倒を予防することも重要です。
歩きにくさやバランスの低下がある場合には、家の中の環境を見直してみましょう。
例えば、
① 床に物を置かない
② 電源コードなどを整理する
③ 滑りやすいマットを避ける
④ 夜間の移動には照明をつける
⑤ 必要に応じて手すりを設置する
などの工夫があります。
「転ばないように」と外出を控えすぎることは、かえって身体を動かす機会を減らしてしまうことがあります。
安全に配慮しながら、できる範囲で活動を続けることが大切です。
食事や便秘にも注意しましょう
パーキンソン病では便秘が起こることがあります。
便秘対策として、
① 水分を十分にとる
② 野菜や食物繊維を取り入れる
③ 適度に身体を動かす
④ 規則正しい生活を心がける
といった工夫が役立つことがあります。
➃ 運動症状以外の症状も治療します
パーキンソン病では、手の震えや歩きにくさだけでなく、さまざまな症状が起こることがあります。
例えば、
① 便秘
② 立ちくらみ
③ 排尿の問題
④ 睡眠の問題
⑤ 嗅覚の低下
⑥ 気分の落ち込み
⑦ 疲れやすさ
などです。
これらの症状も生活の質に大きく関係します。
「パーキンソン病だから仕方がない」と我慢せず、気になる症状があれば主治医に相談しましょう。
運動症状だけでなく、患者さんが生活の中で困っていることを一つずつ確認し、必要な治療を考えることが大切です。
➄ 症状が進行した場合の治療
パーキンソン病では、病気が進行すると薬の効果が安定しにくくなることがあります。
そのような場合には、専門的な治療が検討されることがあります。
代表的な治療として、
① 薬の組み合わせや服用方法の調整
② 持続的に薬を投与する治療
③ 脳深部刺激療法(DBS)
などがあります。
脳深部刺激療法は、脳の特定の部位に電極を留置し、電気刺激によってパーキンソン病の運動症状を改善する治療です。
すべての患者さんが対象となるわけではなく、症状や薬の効果、副作用、全身状態などを詳しく確認したうえで適応を判断します。
必要に応じて専門施設と連携しながら治療を進めます。
パーキンソン病の治療で大切なこと
パーキンソン病は、短期間で治療が終わる病気ではありません。
そのため、長期的に症状の変化を確認しながら治療を調整していくことが大切です。
特に重要なのは、
① 薬を自己判断で中止・増量しない
② 症状の変化を主治医に伝える
③ 定期的に診察を受ける
④ 無理のない範囲で運動を続ける
⑤ 転倒などを予防する
⑥ 日常生活で困っていることを相談する
ことです。
治療の目標は、単に「震えをなくす」ことだけではありません。
仕事や家事、趣味、外出など、患者さんができるだけ自分らしい生活を続けられるようにすることも、パーキンソン病治療の大切な目標です。
このような変化があれば相談しましょう
パーキンソン病の治療中に、次のような変化があれば主治医に相談してください。
① 薬が効いている時間が短くなってきた
② 次の薬を飲む前に動きにくくなる
③ 身体が勝手に動くようになった
④ 転倒することが増えた
⑤ 歩き始めに足が出にくい
⑥ 飲み込みにくくなった
⑦ 声が小さくなった
⑧ 便秘や排尿、睡眠などの症状が悪化した
⑨ 日常生活で以前より困ることが増えた
こうした変化を早めに伝えることで、薬の調整やリハビリテーション、専門医療機関への紹介など、必要な対応につなげることができます。
まとめ
パーキンソン病の治療は、薬物療法だけではありません。
① 薬によってドパミンの働きを補う
② 運動療法やリハビリテーションを行う
③ 転倒予防など、生活環境を整える
④ 便秘や睡眠などの運動以外の症状も治療する
⑤ 症状が進行した場合には専門的な治療を検討する
といった方法を組み合わせながら治療していきます。
パーキンソン病は、症状が少しずつ変化していくことがあります。
そのため、「薬を飲んでいるから大丈夫」と考えるのではなく、定期的に状態を確認し、その時々の症状に合わせて治療を調整することが重要です。
また、「最近薬が効きにくくなった」「歩きにくくなった」「転倒が増えた」などの変化があった場合には、我慢せず主治医に相談してください。
適切な治療とリハビリテーションを続けながら、できるだけ長く自分らしい生活を続けていくことを目指しましょう。
当院は脳神経疾患・消化器疾患を専門とするクリニックです。生活習慣病や発熱、健診など一般内科に関しても対応しておりますのでお気軽にご相談ください。
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